忍耐の年になりそうなマラウイ

なかなか日本に帰ってくると、あれこれとやらなければいけないことというか、マラウイでの生活と違ってやれることが多いので、結果ウェブ更新の時間がなくなってしまった感じですが、2013年もよろしくお願いいたします。

昨年の同じ時期は、マラウイの首都リロングウェで生活していて、昨年(2012)の1/5には、リロングウェのオールドタウンで警察と違法な路上販売者が衝突、私も危なく巻き込まれそうになったんだな、と思うと日本での生活は、本当に平和です。

さて、日本からマラウイをウオッチしてみると、今年のマラウイは忍耐の年になりそうです。昨年をちょっと振り返ると、

■ 前ムタリカ大統領の急死、ジョイスバンダ大統領の誕生

私が3月に帰国した直後の出来事で本当にびっくりしたのですが、前ムタリカ大統領が4/5に心臓発作で死亡しています。ムタリカ大統領は独裁色を強め、ドナーもその前年から援助を凍結、経済が悪化、2011年7月20日には、マラウイでは異例の全国規模の反政府デモが起こり、全国で20名の死亡者が出たりしていました。こうした中、今後どうなるんだろう、と思っている中での急死でした。その後、憲法に従い、副大統領であった女性のジョイスバンダ氏が大統領に昇格しています。

バンダ大統領は、前ムタリカ大統領のときに、当時与党であった民主進歩党でしたが対立が激化して野党に転じ、人民党を結成しています。こうしたことから、海外のドナーや国民もバンダ大統領の誕生を歓迎しました。

■クワチャの大幅な切り下げと物価上昇

マラウイは、国際通貨基金(IMF)の支援を受けて、国際収支バランスを改善するための長期的な構造改革の融資制度である拡大信用供与(ECF)を利用して構造改革を行なっていますが、IMFは、この融資制度を利用するにあたり、マラウイにクワチャの切り下げを強く要求していました。前ムタリカ大統領は強く拒否し続けていたため、融資は凍結されてしまいました。

バンダ大統領は、このIMFのECFの再開に向けて、昨年5月にドルに対して50%という大幅なクワチャの切り下げを実施しました。それまで、1ドル166MKぐらいで推移していましたが、250MKとなりました。その後、公定レートは市場と連動して変動するようになり、現在は、1ドル340MKぐらいで推移しています。

これによって、困ったのは物価上昇で、まずガソリンの価格がクワチャ切り下げで大幅に上昇し、輸入品も当然価格が大幅上昇することになりました。政府発表のインフレ率は、昨年は28%となっています。これによって生活が厳しくなったため、マラウイでは、賃金アップを求めてのストライキなどが各地で発生したようです。

■タンザニアとの国境紛争

これは一昨年(2011)の10月に、マラウイ政府が、アフリカの探鉱を行なっている英国拠点のSurestream石油社に対してマラウイ政府がマラウイ北部での天然ガスと石油について探鉱権を与えたことを発端として、資源をめぐり、タンザニアとマラウイ湖の国境について紛争が再燃しています。8月、9月と両国で会合がもたれたようですが、マラウイ側はマラウイ湖全体がマラウイ領土であると主張(つまりマラウイ湖沿岸部がタンザニアとの国境)しているのに対して、タンザニア側は、マラウイ湖の真ん中が国境であると主張しています。やはり、どこの国でも資源が絡むとややこしくなります。

■燃料価格の上昇と燃料不足の再燃

ガソリンなどの燃料は、クワチャの切り下げと原油価格の世界的な上昇を受けて、5月、9月、10月と私の知る限り、3回変わっています。ガソリンはたぶん、現在は、1リットル570.2MK(約148円)だと思います。燃料価格が上昇すると、内陸国であるマラウイは輸送コストに反映されるので、輸入品はクワチャ切り下げと相乗で価格が上昇してしまいます。

燃料不足は、新大統領の誕生とともに一旦は周辺国の援助などにより需給は改善されたようですが、再び発生しています。政府は、以前から浮上している燃料の備蓄施設などを作るなどして、対策をとろうとしているようです。たぶん、現時点では備蓄設備がないようなので、燃料は1.5日分ぐらいしかもたないはずで、ちょっとでも供給が止まると燃料不足になります。

■ さて、今年は

ちょうど、先週の金曜日(1/4)にIMF専務理事であるラガルド氏がマラウイを初訪問し、バンダ氏のクワチャ切り上げなどの大胆な経済改革について評価する声明を発表しています。また、マラウイの経済の多角化を促したようです。

マラウイ経済は農業に依存しており、特にタバコとトウモロコシに頼っています。いずれも天候に大きく左右されやすく、輸出品であるタバコは市場価格と外国為替の影響も受けます。こうした構造から脱却することがマラウイの経済発展の鍵となっています。ムタリカ前大統領政権下の2011年にはドナーの援助も凍結され、経済は大きく失速しましたが、昨年、再びドナーの支援も再開され、再び経済が回転しはじめています。しかし浮上するまではもう少し時間がかかりそうで忍耐強く経済改革を進めることができるかが鍵です。国民も物価上昇で苦しいところですが、がんばりどころだといえると思います。

マラウイ消費者協会は、1/17に現在の経済的な苦境、クワチャの切り下げと変動レートなどに対して抗議するために全国規模のデモを計画しているようです。個人的には、これは賢明とはいえません。国全体の産業構造をどのように変えていくのか、そんなことをぜひ、議論してほしいと思います。忍耐の年だと思います。